
今夏、荒起の際、トラクタのクローラが圃場内で破断するアクシデントがありました。
その際に圃場からクローラを救出する、それを格納庫まで輸送する、さらには自分たちで新旧クローラの機体への脱着する、までを居合わせた者・駆けつけた者であり合わせの車両や器具を使って試行錯誤しながら行いました。
これは当営農でよく見かける光景の一例であり、依存的自立をよく表している点景であると思います。
一方で、ちょっとした作業は皆を呼ぶまでもなく気がついた者が行う、という姿も散見されます。
ちょっとした作業でも積み重なれば相当な作業量になります。
その作業の必要性に気づいた者が気がつかない者・居合わせなかった者より多く汗をかくことになります。これが先ほどの「自己犠牲」ということばの一側面です。
作業に習熟し気づく者が増えるほど、現場に居合わせる者が増えるほど、「自己犠牲」が広く薄く分配されることになるので、偏りのない「互助」であり、バランスのとれた「依存的自立」の姿につながります。
後継者となるべき人材を数多く育成しようという課題はここでも顔を覗かせます。
また先日は米の配達に回りました。
営農舎から購入したコメを譲渡して回ったのです。
今年からは湖南地域のみならず、京阪地域まで足を伸ばして知人に渡してきました。
当営農のコメを良い条件で買ってくれる固定客が各地に増えるほど、当営農としても新デバイス導入を含めて次の一手を打ちやすくなるでしょう。
将来も水稲を続けているのか他の作物に活路を見いだしているのかは、わかりません。
しかし、いま当営農の経済的体力をすこしでも維持・向上することが将来取り得る選択肢を拡げることにもつながるし、当営農に参加する魅力があると多くの人に訴求する力を持たせることにもつながるでしょう。
そんな思いから筆者も多くの人に当営農のコメの魅力を知ってもらいたい、買ってもらいたいと思っています。
毎年少しずつ固定客が増えていることが楽しみです。
いずれアプリを活用して、新しい販路も開拓してみたいと思います。
最後にスマート農機を導入した際の功罪のうち、先輩から発せられた導入で危惧されるデメリットの声を確認し寄稿文の結びに入らせていただきます。
その声とは
――「維持費」(がかかる)
――「操作に興味がある者が少ない」従って「操作者が(作業負荷が)特定の人物に集中する」
――「従来型の『3K職業』から解放するには、高性能機器の導入が必要」だが「規模拡大や儲かる農業に課題が多い」
などです。
ひとつは経済面での危惧です。
導入後に維持し続けられるだろうか、という懸念が出されたほか、規模拡大や儲かる農業の実現までに乗り越える課題が多いという回答には、3Kから解放されても導入と維持に見合う収益があまり見込めそうにない、という側面もうかがえそうです。
もうひとつの危惧は、人材が拡充できるのだろうか、という懸念です。
作業(特定の機器・操作)に参加する者が限定的で、作業の負荷が特定の人物に集中してしまうことが、少人数で行えるメリットと興味関心を持つ者が少ないという現状の組み合わせにより惹起してしまいます。
また回答の中に、儲かる農業になれば「若年層の参加も得られやすい」とありましたが、規模拡大や儲かる農業に至るのに課題が多いのなら「儲かる農業→若年層の参加」のステップとは別に若年層参加の知恵も必要なようです。
本稿では「人材が不足していること」を軸に述べ、人材不足が例えば後継者の育成や、新デバイス導入の判断力に影響していることと絡めてまとめました。
当舎は大きな決定には構成員による合意が必要です。
しかし現場を知り習熟している人材が限定的であるなら、転換への理解を得る難しさに直面するでしょう。
各構成員に自分事として引きつけて共感してもらう上での難しさにも直面するでしょう。
人材不足は営農舎の合意形成と決定にも影響を及ぼしています。
スマート農業に引きつけるなら、ドローンをはじめとする諸デバイスに魅力を感じるものの、少人数でも可能という消極的な解消ではなく、新規の、あるいは回帰する(若年層の)就農者が増えるという積極的な意味での人材不足解消につながるだろうかという思いを一方で抱きます。
このようなことが問題意識として底流に沈潜しているため、若年層を巻き込んだ就農者の再編・組織化に取り組んでいたり、成功している集落営農の方々がいらっしゃれば、それは農産品や規模が牽引する形で営農が活性化したからなのか、それとも集落・地域の組織化が下地となって活性化したのか。その両者あるいはそれ以外の進め方だったのか。
その経緯と知恵を拝読できる機会に浴したら幸甚です。
ほかにも、スマート農機を集落単独で導入するのとは別に、たとえば複数の集落営農横断的なスマート農機をシェアする仕組みなど、スマート農機導入の多様なあり方の模索あるいは取り組みに携わっていらっしゃる方のお話、あるいはスマート農業のデバイスやシステム導入を英断された集落営農が、どのような議論を経て導入に至ったのか。
導入の是非二つの立場で交わされた議論の内容と、導入という結論に決着した最大の理由はなんであったのか。
――などなど、非常に食指をそそる内容です。
今後投稿される寄稿で拝読できる機会があることを期待しつつ筆を置きます。
昨年度人材育成講座に参加させていただき、スマート農業のシーンを多面的にご紹介くださったおかげで、右も左もわからぬスマート農業の世界を自身に引きつけて考えを整理しての位置づけが見えてきたことは筆者にとっての財産です。
また今回このようなコミュニティの場を開設・運営してくださっている滋賀県庁みらいの農業振興課の皆様、スカイオーシャンキャピタルパートナーズの皆様、どうもありがとうございます。
今年度も講座運営に奔走されていらっしゃることと思います。どうぞお疲れの出ませんように。
この場を借りて皆様にお礼を申し上げます。
記:西山営農舎 T様 (滋賀県長浜市)










