
しかし一方で技術や環境が改善・向上・刷新しても、それを利用する個人にそれらを評価する目がおいつかなければ、導入のメリットとデメリットを数えることはできません。
メリットが上回っているはずだという計算があってはじめてあたらしいデバイス(農機や端末など)やシステムを導入する動因となります。
したがって機器の操作・管理、圃場の管理、ひいては販売に至るまで「営農」におけるそれぞれの局面に理解を深めていくことが導入の判断をめぐる条件となるでしょう。
平たく言えば、「ありがたみがわからない」「善し悪しが実感できない」なら判断はできないからです。
つまり集落営農の現状とスマート農業導入への道程の遠近に関わらず、オペレーター自身の営農への理解がスマート農業導入如何の判断にもとめられてもいるのです。
このように自分の目の前にあることをひとつずつ触れ体験を通じて学びを深めていく機会が営農において得られることが導入の際の判断に直結してきます。
先述のように外部に委託する作業によっては既にスマート農業を導入しているものも現れ始めているので、営農への学びを深めることとスマート農業の一端に触れることとの両者が併存する状況にはいりました。
早晩、所属する営農にとって非常に魅力的に映るデバイスがあらわれてくるでしょう。
ところで筆者は営農の全体像も、機械の操作・構造も学びが遅々として進んでいません。
また集落の出身でもなく農業とは無縁の世界でここまできました。
従って、集落において上の世代の背中を見て自然習得するであろう「常識」もありません。
お手伝いをしようというところから作業にまぜていただき、当初のお手伝いの枠が拡がって今に至っています。
湖南地域から不定期で通って作業に関わっているため、日々刻々と変化する圃場の様子にも勘所にも疎いです。
何が言いたいかというと、新しいデバイスの良さがスペック情報として革新性と至便性を理解できる部分があっても、実感・痛感にいたりません。
かゆいところに手が届いているデバイス、と気づけるまで判断力が追いついていないのです。
一見ネガティブにも思える言い草ですが、自身としてはかなりの進歩だとひそかに自負しています。
新デバイスとそれを評価する自身の知識・技能のギャップを知ったからです。
筆者について言えば、今年度より法人のなかでの立ち位置が変わり、機器の取扱いや農地の管理に参加する度合いが高まりました。
オペレーターなどの後継者の育成が急務と語る先輩もいらっしゃったので、その流れのひとつでしょう。
作業出役に若者の参加が得にくいことに憂慮する先輩もおられ、まず現状維持を図りつつ『楽しく儲かる農業』へのブレイクスルーを摸索している状況です。
筆者自身は習得の速度がゆっくりな方であるため、先輩方には辛抱強く見守っていただいています。
このようにいままで参加していなかった人員に参加の度合いが高まるなど、出役できる人材の多様性を確保しようとすることが、当集落営農で力をいれている点です。
最近あったエピソードでは、一線からやや引かれた先輩が保有する籾の乾燥機や籾摺り機について、稲刈りシーズンの前に機器や部材のレイアウト・組み立て、配線などに今年初めて参加したことが挙げられます。
筆者だけでなく他の先輩方もはじめてだったようで、あまり共有されてこなかった知識や技能、身体感覚に収まっていて言語化されていなかったことなどを承継させようという最近の流れの一端ではないでしょうか。
筆者は先述のように集落の文脈では周辺に位置する人物であるため、集落の中心に位置する若年層にも積極的に参加していただき知識と技能の共有ができることを願っています。
特定の人物がいなくては機能しない組織というのは脆弱です。
だれが入れ替わっても同じ機能・効果が期待できる組織こそ強靱です。
そういう意味でも集落の文脈を熟知し物理的にも近接している若年層にぜひ経験を積んでいただき、組織・オペレーターの裾野がひろがってほしいと願っています。
話をもどすと、これらの知識や技能の共有化は集落営農にひろく新しいデバイスを導入する上での判断力を育むことにつながるでしょう。
営農ごとの環境と関連する独自の特性に見合った新デバイスを見定められるようになり、先輩のフレーズを借りると『楽しく儲かる農業』への足がかりになるかもしれません。
人材の豊富さと楽しく儲かる農業とは相乗的に加速して雄飛するものでしょう。
いまは両方に向けて地均しをする段階で、雌伏の困難な時期なのかもしれません。
記:西山営農舎 T様 (滋賀県長浜市)










